「スマートムーブ」制度、通勤時間が減って、手当と資格が増える驚きのアイデア!

株式会社アイペック(富山県富山市)

SDGsの成功事例として各メディアに相次いで取り上げられるなど、知名度の高さで群を抜く北陸のSDGs先進企業が、富山市に本社を置く株式会社アイペック(以下、敬称略)。

あらゆる構造物の非破壊検査や調査・診断、IoTサービスなどを展開する同社は、「街の健康と人の健康を守る!」というSDGs宣言が示すとおり、東出悦子社長が次々に打ち出す働き方の革新アイデアが話題を呼んでいます。

どうしてもその秘訣を知りたい働き方のSDGs研究所は、同社にインタビューさせていただきました。

社会インフラのために働く社員の健康を守りたい

「社員の健康を守りたい、その想いから始まったんです」

東出社長とともに、女性活躍の先進企業でもある同社の荒木和総務部長の話は、社員への想いあふれるSDGsな働き方改革への、一歩先を行く挑戦でした。

「お客様のための時間はしっかり確保しながら、社内の業務時間をいかに生産性アップするか? そのために2021年から始めた新たな取り組みが、スマートムーブ制度です」

通勤時間が減るほど、手当がもらえる!?

「スマートムーブ」とは、自動車などの移動手段をいろいろな形で見直すことにより、温室効果ガス排出量の削減を目指す取り組みとして、環境省が広く推進している地球温暖化対策の一つです。

同社では、毎朝必ず会社でタイムカードを記録してから現場へ向かうため、朝早く家を出なければならなかった従来の就業ルールを見直し、自宅から現場への直行・直帰を可能にすることで、移動時間とCo2を削減できる仕組みを導入しました。

その前提となるのが、スマートフォンで出退勤時刻を打刻できるクラウド勤怠サービスの活用です。GPSによる位置情報付きで勤務時間を記録できるため、直行・直帰であっても信頼性の高い労働時間管理が可能になります。

直行・直帰の仕組みだけであれば他社にも事例はありそうですが、同社独自のスマートムーブ制度が本当にすごいところは、これからです。

同社では、直行・直帰をした社員に、1回当たり1,800円〜6,000円の手当まで支給されるというのです。通勤時間が減るほど手当がもらえるとなれば、社員の関心度が高まらないはずがありません。

チューリップテレビ ニュース番組「N6」 2021年9月14日放送「富山のSDGs」より

実際に、通勤時間の削減効果は、毎月1人あたり約3時間に及ぶといいます。

「時間数の削減結果以上に、健康面でも社員の体の負担やストレスが減り、その分仕事にしっかり集中できるという効果も期待できます」

実現できた背景には、どこでも仕事ができる先進のDX環境

ワクワク感が止まらない当研究所は、少し意地悪な質問とは思いつつ、荒木部長に投げかけてみました。

「本来は必要のない直行・直帰がやたらと増えて、社員が会社に来なくなるという副反応はありませんか?」

対する荒木部長の回答は、すがすがしいほど明快なものでした。

「当社では、どんどんスマートムーブ制度を使うよう社員に推奨しています。そう言い切るために、DX化でどこでも仕事ができる環境を整えてきました」

これが、コロナ禍でのリモートワークへの迅速な対応にも功を奏したといいます。

2019年12月の新社屋移転時には、自由な席で仕事ができる「フリーアドレス制」のオフィスを採用。部門間を超えたコミュニケーションの活発化につながっているそうです。

削減した移動時間を資格の学習タイムに! またまた手当支給!?

同社が特筆に値する理由はこれだけではありません。スマートムーブ制度で生まれた余裕時間を活用する「自己啓発支援制度」「自己啓発支援タイム」を併せて制度化したことです。

2020年6月より、自己啓発支援制度を導入。複数人で1時間以上学習すると、自己啓発支援手当 2,000円を支給しています。

さらに、2021年4月より、毎週水曜日17:00~20:00に自己啓発支援タイムを設定し、大会議室で社員が資格学習に自主的に取り組んでいます。こちらも参加1回あたり2,000円の手当が支給されるとあって、制度の利用回数が増加しました。

「資格ビジネス」といっていいほど、資格保有者数が営業競争力に直結する同社の業界において、自己啓発支援タイム実施後の試験合格率は以前より15%も向上したといいますから、まさに、社員にとっても、会社にとっても、一挙両得の成果です。

2020年(4月~3月)2021年(4月~12月)
受験者数2350
合格数927
合格率39%54%
自己啓発支援制度利用回数184回551回
※参考データ(同社まとめ)

時短効果→自己啓発へ、“やる気スイッチ”

「一人ではなかなか続かない勉強が、仲間と一緒なら頑張れるムードづくりも自己啓発支援タイムの効果です。実技試験の手ほどきを社員同士で教えあう場面は、以前にはあまり見られなかった嬉しい変化です」

DXとスマートムーブ制度で生み出した時短効果を、自己啓発のやる気へと変換し、それが結果的に、社員の自分ブランドの確立と、会社の価値向上へとつながる同社の改革は、働き方のSDGsをめざす多くの企業にとって、刺激と希望を与えるに違いありません。

株式会社アイペック
https://www.ipec-com.jp/

チューリップテレビ ニュース番組「N6」 2021年9月14日放送「富山のSDGs」より

【SDGsへの貢献性】

〈ターゲットNo.8-2〉
商品やサービスの価値をより高める産業や、労働集約型の産業を中心に、多様化、技術の向上、イノベーションを通じて、経済の生産性をあげる。

〈ターゲットNo.4-4〉
2030年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。

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